December 2017  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

待機児童対策、自治体の頑張り度は…?「100都市保育力充実度チェック」2017

 

【日本保育協会「保育界11月号掲載記事】

 

保育園を考える親の会が、首都圏主要都市と政令市の100市区を対象に実施する調査「100都市保育力充実度チェック」の2017年度版を、10月13日に発表しました。トピックスを拾うと…。

 

入園決定率が若干改善
2017年4月1日現在の待機児童数は、2,528人増加したことが9月1日、厚生労働省から発表されましたが、保育園を考える親の会が独自に調査している入園決定率は、有効回答した79市区の平均で74.2%と、昨年度よりも1.4ポイント改善していることがわかりました。入園決定率とは、新規に認可施設・事業への入園を申し込んだ子どものうち、何パーセントが入園できたかという数値です。待機児童数では入園の難易度はわからないため、保育園を考える親の会が2009年度から独自に調査しています。

 

定員拡大して改善した自治体、しない自治体
2011年度からの各自治体の定員拡大率も調べて、入園決定率との関係を調べてみると、下図のとおりになりました(2011年度は保育所のみの定員、2017年度は認可全体の合計定員)。この図で、右下にきているのは、待機児童対策を頑張っているのにニーズ増に追いついていない自治体です。右上は、待機児童対策を頑張って入園事情が改善している自治体。左下は、入園事情がよくないのに定員拡大が鈍い自治体です。

 

園庭保有率はさらに低下
保育園を考える親の会では2015年度から保育所の園庭保有率を調べていますが、2017年度は76.1%(有効回答97市区の平均)で昨年度より2ポイント低下していることがわかりました。今後も低下が続くことが予測されます。

 

親の会サイトがリニューアル
この発表に合わせて保育園を考える親の会のサイトがリニューアルしました。また、このサイトで、「100都市保育力充実度チェック」の頒布もしています。自治体ごとの詳細なデータを調査していますので、ぜひお取り寄せください。
http://hoikuoyanokai.com

 

JUGEMテーマ:保育園

園庭をめぐる議論

【日本保育協会「保育界」8月号掲載記事】


保育所の園庭が減っている

 保育園を考える親の会が100市区に毎年行っている「保育に関する調査」(『100都市保育力充実度チェック』として発行)で見ると、都市部の保育所の園庭保有率は激しく減少しています。
 図は、自治体の2011年から2016年までの5年間の認可全体の定員の拡大率を横軸に、2016年の保育所の園庭保有率を縦軸にとった散布図で、一つ一つのマークが首都圏の市区を表しています。近似曲線を引くと、定員拡大率が大きいほど、園庭の保有率が低いという傾向を示しています。園庭を保有する保育所が全体の2〜3割程度しかない自治体もあります。また、この数値は調査を実施した2年間で全体的に低下しています。

 

「井戸水を飲むなと言うのか」
 待機児童が多い地域で、量の拡大のために質が犠牲になっていることは明らかです。保育園を考える親の会では、園庭が軽視されていることについて警鐘を鳴らしてきましたが、この問題については、保護者の間でも微妙な議論があります。
「園庭がなくてもよい保育ができている施設もある。園庭だけが保育の質ではない」
「園庭のある保育所にこだわっていたら、待機児童対策はできない。質が高くても、入れなければ意味がない」
 前者の意見は、私も同意します。園庭がないからダメとは言えません。周辺環境に恵まれ、十分に散歩に連れ出せるだけの人手とやる気があれば、自前の園庭がないデメリットは補えます。しかし、今増えている園庭のない保育施設が全部その条件を満たしているとは思えません。そもそも、保育所の整備にあたって、そのような精査はまったく行われていないように見えます。
 後者の意見は、現実的です。でも、本当に園庭付きでつくれないのか、自治体にもう一度問うてみる必要があります。上図では、一定の定員拡大をしながら、園庭保有率を比較的高く保っている自治体もあります。また、本当につくれないような地域には、これ以上子育て世帯を集めてもいいのかとも思います。都心の市区は、定員拡大率が200%を超えていても、なお入園決定率(入園を申し込んだ児童のうち入園できた児童の割合)が低く、さらに園庭保有率も低いという二重苦になっています。都心集中のデメリットが子どもの育つ環境を劣化させているように見えます。
 園庭を求める意見に対して「喉が渇いて死にそうなのに、井戸水は衛生的ではないから飲んではいけないと言うのか」という批判をSNSでした人もいました。
 死にそうなときは泥水でも飲まなければなりません。でも、本当にそうなのでしょうか。園庭のない保育施設が「不衛生な井戸水」だとは私は思いませんが、もしもそうなら、なおさら、私たちは子どもたちのための「安全な水道」をひくように国や自治体に要求しなければなりません。
 東京オリンピックに向けて、今、東京では交通網、商業施設、文化施設、アメニティ空間などの無数のインフラ整備計画が進行しています。大人たちは「ドリンクバー」状態なのに、子どもには「井戸水」を飲ませるようなことになっていないか、今一度議論してみる必要があります。
(注)上図は、首都圏の有効回答75市区の状況。(2016年度版「100都市保育力充実度チェック」の数値から作成)

JUGEMテーマ:保育園

少子社会の子育て支援(保育政策の課題8)

【都政新報 2017年6月27日掲載】

 ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は、幼児教育は国家にとって最も費用対効果が高い教育投資であると指摘した。彼が分析した「ペリー・プリスクール調査」では、貧困地域で質の高い幼児教育を実施し、この教育を受けた子どものグループと受けなかった子どものグループを追跡調査したが、40歳時点で所得、学歴、生活保護歴、犯罪歴などに顕著な差があったという。つまり、全ての子どもに質の高い幼児教育を受けさせることができれば、担税者を増やし、治安や福祉のコストを減らすことができるというのだ。ここでいう幼児教育とは、早期教育ではなく、子どもが自分の好きな遊びをして一日の終わりに遊びの振り返りをするという地道なものであり、そのあと家庭訪問して子育ての指導もしていることが注目される。
 アメリカの国立小児保健・人間発達研究所による調査では、子どもの発達には家庭の養育とともに保育の質が関与しており、保育者の人数などの構造的な質と、保育者の子どもへの関わり方などのプロセス的な質の両方が子どもの発達にとって重要であることが明らかになっている。
 今、日本の保育の現状はどうだろう。園庭がなく保育室も狭く(面積基準は緩和されている)、保育士の配置基準は最低限度で、子どもにゆっくり関わるゆとりも失われがちだ。保育士の待遇が悪いためにキャリアを積むことができず、家庭の子育てを支援する専門性も不足している。
 都の待機児童問題はいまだ深刻だが、日本全体では、少子化が進行している。子ども施策はもっとていねいにやっても高齢者ほど予算は膨らまない。保育士の待遇改善をし、人員配置を増やし、園庭・保育室などのハード面の質も上げ、保護者支援をするゆとりを持たせ、いつでも入園できるキャパシティーをもたせること。少子時代の子どもたちを大切に育むために、これらの実現は待ったなしだと思うがどうだろうか。
=おわり

JUGEMテーマ:保育園

*都政新報:都内自治体を対象にした行政専門紙。創刊67年。

12345>|next>>
pagetop