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保育所の人件費に厳しい視線

【日本保育協会「保育界」3月号掲載記事】

 

■「世界」2月号・3月号に衝撃記事
 月刊誌「世界」2月号・3月号に、「職業としての保育園」という特集が掲載されているのはご存じでしょうか。東京23区内の保育所の人件費比率について取り上げられており、2月号の(上)では社会福祉法人立、3月号(下)では企業立を中心に分析がされています。書き手は、主に女性の労働問題を中心に多くの著作があるルポライターの小林美希さんです。
 保育士の待遇問題が社会問題となり、保護者としても、一刻も早く十分な待遇改善がされ、意欲と資質を備えた人材が保育に安定的に従事してくれるようになることを切望しています。
 国や都は次々に待遇改善策を打ち出していますが、記事で取材されている保育士たちからは、まだまだ厳しい現状が語られていました。
 記事では、東京23区でキャリアアップ補助金を受けた保育所733施設の財務諸表から算出した人件費比率を、低い順から並べたワーストランキングも掲載されており、なかなかショッキングな内容になっています。

■お金が保育士に届かない?
 この分析で特徴的なのは、全体人件費率比率のほかに、保育士、子育て支援員、保育補助、調理員、看護師、准看護師、栄養士(いずれも非常勤も含む)の人件費だけで算出する保育者人件費比率が明らかにされていることです。この保育者人件費比率が4割を切っている施設は、社会福祉法人立では477施設中39施設(8.2%)、株式会社立では256施設中107施設(41.8%)ありました。
 ワーストランキングに掲載された各施設の保育者人件費比率の最低値を見ると、社会福祉法人立で24.5%、株式会社立で17.3%となっています。また、これらの施設について、施設長や事務職員も含めた全体人件費比率を見ると、社会福祉法人立では、42.0%〜73.7%、株式会社立では、28.8%〜59.9%でバラついており、全体人件費比率と保育者人件費比率の間には、相関は見られませんでした。つまり、全体人件費率が高くても、保育者人件費率が高いとは限らないということです。施設長等の給与が相対的に高い場合には、これらの比率の差は大きくなります。
 小林さん自身も書いていますが、情報開示された財務諸表には明らかな記載の誤りがあるものもあり、また、法人に取材した結果、保育士の実際の給与は非常に高いにもかかわらず、新規開設に伴う種々の自治体の補填により、一時的に人件費比率が低く見えたことがわかったケースもあったそうです。
 このランキングを絶対視はできませんが、保護者の目からは驚きの実態であることには変わりません。厚生労働省は、人件費比率を7割程度と見込んでおり、処遇改善により、保育士の理論上の給与は年収380万円程度になると見込んでいるそうですが、このままでは見込みどおりにはならないかもしれません。

■待機児童対策との関係
 では、保育者の人件費に回らなかったお金はどこに行っているのでしょう。「事業者のもうけ」になっていたり、他の赤字事業の補填に回されていたりすることもありそうです。しかし、ワーストランキングを見ると、旺盛に事業拡大を行っている事業者が多く、保育事業に再投入されている部分も大きいのではないかと思われます。
 保育者の資質は、子どもが受ける保育の質を最大に左右するものです。保護者から言わせてもらえば、保育者にしわ寄せをしない(=子どもにしわ寄せをしない)待機児童対策であってほしいわけで、なんとかしなければならないと思います。事業者の種別を問わず、施設会計を開示することにして、資金の流出などの保育に還元されない使途は制限するようにできないものでしょうか。

 

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待機児童対策、自治体の頑張り度は…?「100都市保育力充実度チェック」2017

 

【日本保育協会「保育界」11月号掲載記事】

 

保育園を考える親の会が、首都圏主要都市と政令市の100市区を対象に実施する調査「100都市保育力充実度チェック」の2017年度版を、10月13日に発表しました。トピックスを拾うと…。

 

入園決定率が若干改善
2017年4月1日現在の待機児童数は、2,528人増加したことが9月1日、厚生労働省から発表されましたが、保育園を考える親の会が独自に調査している入園決定率は、有効回答した79市区の平均で74.2%と、昨年度よりも1.4ポイント改善していることがわかりました。入園決定率とは、新規に認可施設・事業への入園を申し込んだ子どものうち、何パーセントが入園できたかという数値です。待機児童数では入園の難易度はわからないため、保育園を考える親の会が2009年度から独自に調査しています。

 

定員拡大して改善した自治体、しない自治体
2011年度からの各自治体の定員拡大率も調べて、入園決定率との関係を調べてみると、下図のとおりになりました(2011年度は保育所のみの定員、2017年度は認可全体の合計定員)。この図で、右下にきているのは、待機児童対策を頑張っているのにニーズ増に追いついていない自治体です。右上は、待機児童対策を頑張って入園事情が改善している自治体。左下は、入園事情がよくないのに定員拡大が鈍い自治体です。

 

園庭保有率はさらに低下
保育園を考える親の会では2015年度から保育所の園庭保有率を調べていますが、2017年度は76.1%(有効回答97市区の平均)で昨年度より2ポイント低下していることがわかりました。今後も低下が続くことが予測されます。

 

親の会サイトがリニューアル
この発表に合わせて保育園を考える親の会のサイトがリニューアルしました。また、このサイトで、「100都市保育力充実度チェック」の頒布もしています。自治体ごとの詳細なデータを調査していますので、ぜひお取り寄せください。
http://hoikuoyanokai.com

 

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園庭をめぐる議論

【日本保育協会「保育界」8月号掲載記事】


保育所の園庭が減っている

 保育園を考える親の会が100市区に毎年行っている「保育に関する調査」(『100都市保育力充実度チェック』として発行)で見ると、都市部の保育所の園庭保有率は激しく減少しています。
 図は、自治体の2011年から2016年までの5年間の認可全体の定員の拡大率を横軸に、2016年の保育所の園庭保有率を縦軸にとった散布図で、一つ一つのマークが首都圏の市区を表しています。近似曲線を引くと、定員拡大率が大きいほど、園庭の保有率が低いという傾向を示しています。園庭を保有する保育所が全体の2〜3割程度しかない自治体もあります。また、この数値は調査を実施した2年間で全体的に低下しています。

 

「井戸水を飲むなと言うのか」
 待機児童が多い地域で、量の拡大のために質が犠牲になっていることは明らかです。保育園を考える親の会では、園庭が軽視されていることについて警鐘を鳴らしてきましたが、この問題については、保護者の間でも微妙な議論があります。
「園庭がなくてもよい保育ができている施設もある。園庭だけが保育の質ではない」
「園庭のある保育所にこだわっていたら、待機児童対策はできない。質が高くても、入れなければ意味がない」
 前者の意見は、私も同意します。園庭がないからダメとは言えません。周辺環境に恵まれ、十分に散歩に連れ出せるだけの人手とやる気があれば、自前の園庭がないデメリットは補えます。しかし、今増えている園庭のない保育施設が全部その条件を満たしているとは思えません。そもそも、保育所の整備にあたって、そのような精査はまったく行われていないように見えます。
 後者の意見は、現実的です。でも、本当に園庭付きでつくれないのか、自治体にもう一度問うてみる必要があります。上図では、一定の定員拡大をしながら、園庭保有率を比較的高く保っている自治体もあります。また、本当につくれないような地域には、これ以上子育て世帯を集めてもいいのかとも思います。都心の市区は、定員拡大率が200%を超えていても、なお入園決定率(入園を申し込んだ児童のうち入園できた児童の割合)が低く、さらに園庭保有率も低いという二重苦になっています。都心集中のデメリットが子どもの育つ環境を劣化させているように見えます。
 園庭を求める意見に対して「喉が渇いて死にそうなのに、井戸水は衛生的ではないから飲んではいけないと言うのか」という批判をSNSでした人もいました。
 死にそうなときは泥水でも飲まなければなりません。でも、本当にそうなのでしょうか。園庭のない保育施設が「不衛生な井戸水」だとは私は思いませんが、もしもそうなら、なおさら、私たちは子どもたちのための「安全な水道」をひくように国や自治体に要求しなければなりません。
 東京オリンピックに向けて、今、東京では交通網、商業施設、文化施設、アメニティ空間などの無数のインフラ整備計画が進行しています。大人たちは「ドリンクバー」状態なのに、子どもには「井戸水」を飲ませるようなことになっていないか、今一度議論してみる必要があります。
(注)上図は、首都圏の有効回答75市区の状況。(2016年度版「100都市保育力充実度チェック」の数値から作成)

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